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着物のカビ落としで失敗しない為のセオリーを
お教えします。

着物のカビ落としの基本についてまとめてみました。

ご家庭で出来ること、出来ないこと。
カビを再発させない為の注意点、着物の管理
の方法について、お答します。

着物を着ようと思ったらカビが生えていた。
そんな経験はありませんか?

お出かけする日は近いのにどうしたらいいのか
分からない。

楽しみにしていたのに、カビが気になって
着物では出かけられない。

そんなお悩みの解決に役立つ情報を
お伝えします。

ご家庭で出来る着物のカビ落としについて

・着物で出かけようとしていたのに
カビが生えていた。

・クリーニングに出す時間さえない。

そんな場面を避ける為にも、着物で
出かけられる半月くらい前には、着物の状態
を確認しておきたいですね。

けれど残念ながら、大切な着物にカビを
生やしてしまったら、そしてカビの範囲が
幸運にも小さな範囲であったら、
ご家庭内での応急処置で対応できる
かもしれません。

軽度のカビの繁殖の場合、生地の表面しか
カビが生えていないケースがあります。

そんな場合は、あわてず洋服用のブラシなど
でカビの生えた部分を軽くブラッシングして
あげることで、カビを取り除くことが
できるかもしれません。

目に見えない着物のカビに注意して下さい

カビの菌は空気中に漂っているので、
着物に限らずあらゆる衣服に付着する
可能性があります。

まだハッキリと目に見えていなくても
着物全体にカビの菌が広がっている
可能性もあります。

表面的なカビを取り除くことができても、
後々までカビが繁殖しないという
保障はありません。

カビが生えてしまったということは、
カビが成長するための条件が
整っているかもしれません。

必要な処置を行なわなければ、
着物全体にカビが繁殖してしまう
可能性があるのです。

着物のカビはどうして発生するのか?

前述でも申し上げましたが、カビの菌は
空気中に漂っています。

ですから何処でもカビが発生する
可能性があります。

カビが繁殖する要素として
「温度、湿度、栄養分」などが
上げられます。

「湿度70%以上。気温が25~30℃」
くらいがカビが繁殖するのに適した
条件だと言われます。

日本の梅雨時の気候は、まさにカビの
繁殖に適した条件だといえます。

次に栄養分ですが、着物には特にカビが
発生しやす場所があります。

まず胡粉が使われている模様場。

顔料様の胡粉を生地に定着させる為の
定着材にカビの発生が起こりやすいです。

また、着物に施された刺繍は型崩れを
防ぐ為に、わずかに糊が使われることが
ありますが、ここでもカビの発生が
目立ちます。

ほかにも袷の着物の胴裏にもカビが
発生するケースが見られます。

意外に思われるかもしれませんが
たとう紙に発生したカビが、着物に
移っていくケースもあります。

着物の種類のによってもカビが発生しやすい
ものものと、そうでないものが
あるように思います。

黒の喪服や黒留袖、大島紬、泥大島などは
他の着物と比べてカビの発生が
多いように感じます。
 
さてカビが繁殖する条件についてですが、
中でも湿気の及ぼす影響は、非常に大きい
ものがあると思います。

高温でも、カビの好む栄養源があっても、
乾燥した条件の中ではカビの繁殖を
抑えることができます。

そういった意味でもご家庭で出来る
着物のカビ対策の要は、換気、通気、空気を
流通させ着物に湿気を与えないことが
重要です。

そして、ブラシで簡単に落とせる
小さなカビ以外はプロにお任せになられる
ことをお勧めします。

なんだ結局は営業目的か?と思われる
かもしれませんが、一口にカビ落としと
言っても、カビの進行の度合いによって
修繕方法は、かなり変わってきます。

プロでもカビ落としの方法を間違って
しまうこともありますし、
お客様に適切な提案が出来ていない
ケースもあります。

皆さんは カビの落とし方によって 
後々どのような違いが起こってくるのか
想像できますか?

私が専門のプロに任せて頂きたいと
思うのは、この点に尽きます。

カビ落としを任せるお店選びについては、
着物で交流されるグループに入っておられる
ならば、評判の良い店をお友達に
尋ねてみられるのも一案です。

検索サイトでお探しになられるのも
一般的ですね。

その際のポイントですが、正しいカビ落とし
の知識を持っている店かどうか?
が重要になってくると思います。

私のようにブログを介して情報を
発信している業者もあれば、
加工全般について細かく解説されている
サイトもあります。

少し労力はかかりますが、2つ、3つ
くらいは別のサイトをご覧頂いた方が
良いと思います。

いくつかのサイトを比較することで、
カビ落としのセオリーが理解できますし、
加工を依頼する業者の見識や、
力量も見えてきます。

着物のカビを再発させない為に出来ること

それでは繁殖してしまったカビを、
どのように落としていくのか?

カビを除去した後はどのように管理すれば
良いのか?についてお話していきます。

お店によって様々なアプローチを
なされていますので一般的な例として、
ご理解頂ければ、ありがたいです。

標準的?な着物のカビの落とし方

1.軽度のカビ落としならベンジンによる
ブラッシングと丸洗い(ドライクリーニング)
を組み合わせることで、大部分のカビを
落としてやることが可能です。

これにカビの繁殖を抑える薬剤を散布する
ことで、着物に発生したカビを取り除く
ことが可能です。
(その後の湿度対策も大切になります。)

2.変色に至っていないカビが、疎らに
着物に発生しているような場合でも、
ブラシによるソーピングと丸洗い、
水を使用したカビの除去によって、
カビを取り除いてやることは
不可能ではありません。

このようなケースでは、より強力な
防カビ加工を施すこと。年に2回程度の
虫干しを行うことで、なんとかカビの
再発を防げるはずです。

3.変色には至っていないものの、
着物全体にカビが発生している場合は、
着物を仕立てたままでは、カビの除去を行う
ことは難しいかもしれません。

2のケースと同様の処置では、50%くらい
の確率でカビが再発してくると思います。

このようなケースでは、一度、仕立てを
解いて反物の状態に戻し、表裏両面を
水洗いするのが標準的な修繕方法だと
思います。

もちろん防カビ加工も行います。
(別途、仕立て代が必要になります。)

このようなケースではカビが生地の裏側まで
貫いていることが多く、表側だけを
洗浄してもカビを除去できないケースが
見られます。

ちなみに当店では反物状態にした段階で
表裏両面をベンジンでソーピングした上で
丸洗いし、その後に水で両面のカビを
洗い流しています。

どこまで効果があるかは不明ですが、
カビの繁殖が著しく、裏側までカビが貫いて
いるようなケースでは、それだけ深く
生地に根ざしています。

その為、ベンジンによるソーピングで
少しでもカビをそぎ落とした上で、
水洗いを行った方が効果が高いのでは?
と考えています。

ベンジンは水と比べて、強くブラシがけ
してもスレを起こしにくいのです。

水だけで、しっかりと洗い流そうとすると、
どうしても生地がスレてしまう危険性が
高まります。

当店ではベンジンと水を組み合わせた
方法でカビ落としを行います。

4.着物全体に無数のカビが発生し、
且つ変色に至っているケース。

基本的な処置としては3と同様にベンジンと
水洗いを組み合わせた洗浄を行います。

その後、酸化漂白剤などを使用して変色部分
(主に黄変)を脱色し、地直しにより色を
さして、変色を目立たなくしていきます。

はじめに、しっかりとカビを取り除いておく
ことで、漂白剤による脱色を最低限に
抑えることができ、生地にかかる負担を
少しでも軽減することが出来ます。

加えて、しっかりと防カビ加工を
施しておきます。

以上のような加工が標準的なカビ落とし
加工になります。

まとめ

ちょっとした手入れで、殆どのカビは
防げます。ここまでのまとめになります。

・カビの繁殖を防ぐためには
「温度、湿度、栄養分」のコントロールが
重要です。

・カビが生えてしまったということは、
カビが生えやすい条件が整っているかも
しれません。

「温度、湿度、栄養分」の中で、我々が
もっともコントロールしやすいのは
湿度の管理です。

・湿度の管理はもっとも効果が大きい
カビの予防方法です。

・カビが繁殖してしまったら、
迷わずプロに任せましょう。

施す修繕方法によっては再発の恐れも
あるからです。

家庭内で出来る一番効果的な
湿気対策は虫干しです。

・えもん竿に着物をかけて、日差しの
入らない場所で、蛍光灯も消した状態で
2~3日、風を通してあげて下さい。

・虫干しを行うのが面倒くさい。
着物がたくさんあって、虫干しをする
為には相当な時間を取られる。

そんなふうに思われるようでしたら、
たとう紙をタンスから出して、
空気に触れさせてあげて下さい。

クーラーや扇風機と組み合わせると
更に効果を得やすいです。

・それも難しい場合は、タンスを開いて、
クーラーをかける。扇風機で送風を行う。

何年もタンスを閉じたままで着物を放置する
よりは、条件が好転すると思いますので、
一度お試し下さい。

着物に発生したカビを除去したといっても、
カビを全て取り除けたとは限りません。

普段からの予防措置としてタンスの中の空気
を流通させることで、カビの再発を防げる
可能性は飛躍的に向上します。

繰り返しになりますがカビの進行のステージ
カビを発生させるに至った背景に対して、
適切な対応が必要です。

・カビの原因を取り除くことは、
最も低コストなカビ落とし対策です。

・カビの発生を防ぐ為には一にも二にも
湿気を取ることが重要です。

着物を着用されずに放置された為に
湿気を帯びてカビが発生したケースを
何度も見てきました。

着物を着用しない場合でも、年に2回くらい
はタンスの扉を開いてやり空気を流通させ
湿気を取り除くよう心掛けて頂ければと
思います。